由利本荘つつじ堂
- Year
- 2017
- Place
- 秋田県由利本荘市
- Texture
- Timber
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
士別市朝日町を拠点に、木材加工、土木、住宅、福祉等の事業を行っている会社の社屋を新築しました。広い敷地にゆったりと、10×37mの平屋(一部2階建て)の建物を配置しています。SteelやRCと比べてCO2などの環境負荷を抑えられる、地元北海道産のトドマツCLTを率先して使用し、周辺地域にも普及させていきたいというクライアントの熱い思いが詰まったプロジェクトです。特に、クライアントでもあり、工事責任者でもあった常務の菅原さんは、「これからはCLTの時代が来る!」とCLT協会主催のヨーロッパCLT視察ツアーに参加するほど熱心に勉強したうえで新社屋建設を企画したそうです。会社ではスキージャンプチームを擁しており、建物のV字型ファサードは、スキージャンプの滑空姿勢ともシンクロするかのようです。 この建物の構造計画/設計のテーマは、①CLTの構成を表現したファサード(壁版)、②CLTの特徴を生かしたロングスパンの構成(床版)、③Steelポストを併用した無理・無駄の少ない架構の実現などを意識しながら設計を行いました。
構造計画/設計のテーマに則して、AIGのアイデアを挙げると、 ①この建物で1番の特徴は、外観を特徴づけている斜行壁・V字壁です。同幅・同厚のラミナを直交させて積層・圧着させているCLT製品の作られ方をそのまま表現したファサードになっています。ただし、内外ともに表面に仕上げのラミナを貼っており、告示を満足するために、内部の躯体壁は斜行させずに鉛直方向の矩形部材を斜めにカットした形状となっています。さらに、台形や平行四辺形の壁の内接長方形のみが計算上の耐力壁として有効とみなされますが、それに含まれない三角の部分についてもアーチを指向したせり出し要素として、梁の有効スパン低減に寄与しています。 ②RC造のスラブとCLT造のスラブで決定的に違うのは、端部の固定度が評価できるかどうかだと思います。特にCLTの屋根スラブ端部はほぼピンの状態となります。しかも1方向版であることが多いので、単純梁のような応力状態となります。AIGでは、それを逆手にとって中央部のみCLT版を2枚重ね合わせる方法を採用しました。現場で版と版をビス打ちして一体化しています。少し古い木質構造の指針を見ると、小断面材をくぎやかすがいで連結させる重ね梁の設計方法が載っています。材を組み合わせることで耐力や剛性を補っていた、大断面集成材普及する前の技術を、集成材の一種であるCLTに応用するのはなかなか不思議な気もしますが、AIGで標榜している「温故知新」には合致しているアイデアだと思います。 ③CLTを設計する際に、制約条件として大きく影響するのが、原版(マザーボード)のサイズです。CLT床版を設計する際もこれを無視して割付を行うことはできません。この建物の短辺スパンは10.5mで、長辺の原版最大寸法12mを超えるため、中間部に支持部材を設けて2スパンとする必要がありました。通路と執務空間の境目に鉛直支持材と梁を設けてそこにCLT床を載せ掛けることとしました。その鉛直支持材と梁は、モノコック構造を補助する最小断面のコンパクトな部材とするため、強度の高いSteelを採用し、メリハリの利いたハイブリット構造としています。 この建物で一番大変だったのは、壁量の少ない短手方向の壁の設計です。短い壁の両端部に高耐力の金物をねじ込むおさまりは苦労しました。そういう懸念事項に気付くのが遅い私は、まだまだ未熟だなと思うのでした(藤田 啓)