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AIG

Projects

HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.

Hokkaido CLT Pavilion

純粋版使いのCLT+突出杭基礎
  • TIMBER TIMBER

over view & Goal

北海道の建築研究所である旭川の北総研林産試験場と建築家の遠藤謙一良さんとで、林野庁の補助金を獲得して、実行したCLT建築物です。クライアントの林産試験場の想いは、告示の制定に合わせて、森林ストックが豊富な北海道でマスティンバーの一種であるCLT建築普及のために、建物としての性能データ(気密、温熱、振動、耐久、経年など)を得るために実物実験施設としたい。と言うものでした。遠藤さんとの会話で、CLTの可能性を話していく中で、ミース・ファンデル・ローエのバルセロナパビリオンのように、面とガラスと線のパキッとした建築物としてまずは美しいこと、そのため一部Steelの力を借りること、冬の施工となるので、コンクリートを使わない基礎とすること、普及が目的ならば難しいことはしないこと。などをテーマとして考えました。 CLTとは、Cross Laminated Timberの略で、直交するラミナ(板材)を有する2方向に力を受けられる比較的新しい木質材料のことを言います。この材料が建築材料に入ったのが2016年で、それに合わせて、告示が制定されて、一般的な設計が可能となりました。それに合わせて設計をしたのですが、これがなかなかの使い勝手の悪さで、毎日告示の内容と格闘していたと記憶しています。 AIGとしてのこの建物のGoalは、①これからCLTの建物が増える中で、指標となるような「なるほど!」感のある構造計画とする ②シンプルなディテールで難しいことをしない ③今回用に行った道産材CLTの基礎実験データをその後も使える形で取り入れる ④基礎を省力化するために、Steelによるフローティング基礎とする。というものです。

Idea

CLTという材料は、それまでにはない材料ではあるものの、大判で作ることが高効率なので、これは実はPCa+PCと類似する部分が多くあり、PC設計の老舗を自負していAIGとしては、材料の特性やクセが少し変わるだけでスムーズにアイデアを構築しました。 ①安藤が好きな「なるほど!」感のある構造計画のために、まず着手したのが、積雪荷重2.3m(500kg/m2)の旭川で2方向の片持ちをどうやって成立させるか。というものでした。杓子定規に告示を読むと2方向方持ちは禁止。という謎のルールがあり、2方向とならないために、伝統木造の綴り梁のように、屋根CLTを2枚合わせとして、その2枚の強軸方向を直交させることで1方向ずつ支持できるように考えました。CLT床版の割り付けは、Gerber効果を最大限得られる版割として、梁で支持することを極力避けて、それらのJointもSurface Jointではなく、アメリカで一般的なHalf Lapped Jointとしました。 ②まず普及を目的としている建築であるため、最も低次の構造設計ルートCLTルート1を採用していますが、ルート1となると鉛直部材の接合金物がχマークという規格が標準となります。これがなかなか無骨なので、壁量の少ない短手側の縁引張力のみ引きボルト仕様として、壁の多い長手方向はPCa+PCのように、圧着接合とするとディテールが簡素化出来るので、当初チャレンジしようとしましたが、CLTのクリープによって体積変化が起きると、相対的にプレストレスが抜けることになるため、短期で発生する引張力をキャンセル出来るプレストレスを全ネジボルトの締め付け長さ(ネジ山)で管理する方法としました。せん断に関しては、χマークだといかにも。なディテールになるので、③にも繋がるシネジック社のパネリードという長ビスを45°打ちの実験を行いシームが目立たないように考えました。これらの工夫で通常のCLT建築物の版加工に比べると圧倒的に加工が少なくなりました。それ以外にもこれは林産試験場の大橋さん肝入りのアイデアですが、マザーボードという部材切り出し前のラミナを張り合わせたCLT版の状態から効率よく部材を切り出すために、寸法の微調整を行い歩留まり率93%を達成しています。 ③今後の道産CLTの普及のために、使用する材料はカラマツとトドマツの2種類として、それを建物の右と左で使い分けています。写真の赤っぽい方がカラマツで、白っぽいのがトドマツです。道産のこれらは物性値が本州とは異なるため、全ネジ/引ボルトの支圧版回りの支圧、前述の長ビスの直交45°打ち、Half Lapped Jointの長ビス接合2枚重ね梁の単純せん断接合などの実験を行いオープンな資料として、公開しています。これもクライアントが林産試験場であるからこそ出来ることではありますが、林産試験場の方々も自分達が実験したものがその後、目の前で立ち上がって行く姿を見られたことはよかったかな。と勝手に思っています。 ④基礎に関しては、当初からフローティング基礎とすることにしていましたが、突出杭頭とSteelの基礎梁の接合をどこで行うかがテーマの1つとなりした。GLからのフローティング寸法は1F CLT床の振動実験、温熱試験のため、人が入って難なく作業が出来るGL+1mなので、突出杭の途中で柱をJointするのはちょっと不恰好なので、Steel基礎梁の接合ダイアフラム部分でフランジJointとすることにしました。ただ、これは杭という地面相手の工法と、Steelという精度がニアリ0のmmとcm程も精度の異なる工法どうしの接合となるため、杭施工業者とSteelファブと共に色々と対策を考えましたが、結果的には誤差2mm以内で納まり、プロの技を見たような気がしました。 CLTは、直交するラミナで2軸方向に応力負担が出来る版(広義のSlab)となるため、水平部材である床版として、面外方向に利用するのがいいのだと当初は思っていましたが、現状の告示の評価式だと直交方向の剛性、強度は、とても小さくほぼ1方向(One Way)に近い評価となります。そのため、実は壁もしくは梁的に使う方が面白いのではないか。とCLT建築をいくつか設計して感じています。もちろん、床版使いするのであれば、徹底的に効率にフォーカスすることはメリットと言えますが、やはり重たい。 渡辺邦夫さんが著書の中で、「新しい技術の展開がある時に、いち早く取り組んで、利潤追求に仕立て上げて、利益と相反すると分かるとポイッと捨てて、新しい技術の抹殺に走る」と言っていました。今の補助金と木質構造流行りの中でのCLTはその可能性を含んでいる素材であると思います。僕たちは比較的早い段階でCLTを設計するチャンスに恵まれて、その問題点も見えて来ていますが、まずは素材と建物と真摯に向き合い、熱いクライアントに支えられて、アイデアを形にすることが出来て、僕たちが考えたことが少しは活かされて、色々な方々がチャレンジするであろうCLTの今後の発展は楽しみの一つと言えます(安藤 耕作)

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所在地
北海道旭川市
用途
実験棟
プロジェクト期間(開始)
2017.06
プロジェクト期間(竣工)
2019.03
規模
地上1階

Credit

クライアント
北海道庁
建築設計
株式会社遠藤建築アトリエ
立役者(外部)
林産試験場 大橋さん(クライアント)
立役者(AIG)
安藤 耕作
写真家
KEN五島