MTAhouse
- Year
- 2021
- Place
- 東京都港区
- Texture
- RC
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
敷地は桜新町駅前の通りの角を曲がった先に位置しており、2階建てのテナントビルです。内部はテナントビルという用途上、当然キャパシティーの大きさ確保が重要なので、無柱で1辺約14mの正方形スペースが必要でした。屋上は広場として緑に囲まれた憩いのスペースとなっています。 さらに建物の特殊な条件として、将来道路の拡幅が予定されている計画道路に面しており、敷地の約1/4が将来道路になる可能性がありました。そこから、将来的にその計画道路が実施された時に該当部分を壊せるように、鉄骨で作ることで敷地に対してのフットプリントを確保し、加えて、私達AIGとチームである事業主リアルパートナーズからの要望で、減価償却期間を最大化させるため主構造はRC造でという要望がありました。両者の二律背反な事業テーマがあり、それを実現する構造計画のテーマは、鉄骨造で得られるような空間を主構造はあくまでもRC造で実現することでした。 したがって、建物の構造計画/設計のテーマは、①14m×14mの無柱空間、②主構造をRC造とする、この2点をテーマとして設計を行いました。
構造計画/設計のテーマに即して、AIGのアイディアを挙げると、 ①無柱空間として14m×14mという方向性のない空間を鉄骨格子梁で実現しました。正方形PLANを構成するために、一方向に梁を架けると方向性が出てしまい、梁せいも大きくなります。そうならないようなアイデアが鉄骨格子梁で、二方向に力を流すことで、梁せいが小さくなるというメリットと、正方形に合った方向性のない空間が表れることを意図しました。前面ガラス張りのファサード側は計画道路なので、RCの壁は配置せず、鉄骨柱を配置することで鉄骨梁を支え、開放的かつ計画道路実施時の部分的な解体が容易な構造としました。 ②登記上の主構造とは、つまり対震要素をどうするかです。今回はRC対震壁付きラーメン構造としています。対震壁付きラーメン構造と言っても、柱と壁は一体としており、梁は壁と同厚としているため、一見すると壁式のように見えます。しかし、壁式では難しい階高4mをこの建物では実現しており、建物の内部スペースを少しでも広くとるため、RC壁の厚さは150mmで抑え、有効スペースの確保を図っています。RC柱は220mm×400mmの長方形柱で、内部には凹凸が出ないように柱の面と壁面を揃え、外壁側に柱が出るように配置しています。この柱型は、接道面ではルーバーで隠れていますが、隣地側の2辺ではその柱が見えており、このリブ感が外壁のアクセントとなっています。 以上のような条件を整理した結果、鉄骨は軽量でスパンを構築するのが得意、RCは面で水平力に抵抗するのが得意という、適材適所をカタチに落とし込んだ空間が出来ました。現在1階のテナントには京都が本店である珈琲屋さんの東京進出の旗艦店が入っており、桜新町の話題スポットになっているようです。フレキシブルな空間の提供はテナントビルとしては必要条件かと思いますが、さらに建築家とクライアントの想いである街に対してオープンな空間の提供が出来たことで、テナントビルの十分条件に達したと感じています(田邉 俊貴)