LEGALIE道頓堀東
- Year
- 2022
- Place
- 大阪府大阪市
- Texture
- PC
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
狭いことは何かと苦労が多い。この一言に尽きるプロジェクトです。 敷地は日比谷通りに面しており、地下鉄の芝公園駅の地上出口横に位置した9.5m×7.0mの狭小地で、建物は10階建て集合住宅です。この敷地のポテンシャルを最大限に引き出す構造形式を生み出すことが最大のテーマでした。このような狭い敷地だと、シンプルに四隅に正方形柱を配置し、その四隅の柱を繋ぐように梁を配置するというアプローチだと、積層するフロア数に応じた部材断面に収束し、構造コストも低層に比べ当然単価は高くなるという結果は明らかでした。そこで私達AIGとして、この狭い敷地で何が出来るかを、建物の構成要素となる柱と梁の1本1本の在り方、床の構築方法等、今までの当たり前をもう一度見直し、再構築したプロジェクトです。 この建物の構造計画/設計のテーマは、①狭小地に合うPRC架構の構築(レシプローカル柱、モーメントダイアグラム型テーパー梁)、②転倒モーメント低減のための軽量化、③既存杭を抜かずに避ける基礎計画、この3点をテーマとして設計を行いました。
構造計画/設計のテーマに即して、AIGのアイディアを挙げると、 ①狭小地という制約条件がどうしようもなく大きく、逃れられない中で、必要は発明の母だと楽しむ姿勢で柱と梁の在り方を見直しました。まず柱配置はコストと合理性を考えると、やはり四隅に配置することが土俵となると考えました。そこで柱のカタチについて、この4本で何が出来るかを追求した結果、長方形の柱を強弱が入れ替えながら四本配置すると、どの方向からの力に対しても4本それぞれが強弱を補い合うレシプローカルな構築が出来ました。さらに梁については、塔状比が高い建物なので、当然構造コストは通常の低層より高くなることもあり、それだったら、構造的に正しいことをやってやろうと考えました。そこで温故知新のアイデアとして、昔のRC構造の接合部補強のテーパー手法からヒントを得て、積層ラーメンの場合は当然地震時の接合部耐力がクリティカルとなるので、その地震時のモーメントダイアグラムを具現化するようなテーパー形状を思案しました。狭小地の集合住宅というビルディングタイプの均質化に、この柱梁の形状で構造表現を表面化することで、理にかなったファサードデザインが実現しました。 ②当然ですが積層する基準階型の建物は、各層の重量を小さくした方が地震力も小さくなり、部材断面も小さくなるという良いサイクルを回すことが重要で、それを加速できる技術がプレストレスの導入です。プレストレスを導入することで、経験上80%程度の断面に出来るので、その分躯体重量が小さくなります。さらに出来ることを考えると、床の軽量化です。コンクリートに拘るとスパンの1/30程度のスラブ厚さとなりますが、デッキスラブという鉄骨造では当たり前のものを、この建物にはめ込むとさらに軽量化を図ることが出来ています。通常の四本柱ラーメンの層重量と比較すると3/4くらいの軽い架構となっています。 ③敷地は古くから開発されているエリアなので、当然のように四隅に杭がありました。その杭はそのまま存置したままで、挟み込むように杭を四隅に2本ずつ配置し、その3本を包絡するように三角形のフーチングで設計しています。架構を軽量化しているので、ここでも基礎が楽になるという相乗効果を得ることが出来ました。 以上のようなアイディアをカタチにした建物で、一つ一つの手法は、今となっては当たり前な事柄ですが、これらを融合して、少しずつのメリットを享受して、全体を構築する。これが構造デザインの在り方ではないかと考えました。決して目立つ建物ではないですが、そんな当たり前のことを当たり前に実行し、見えてくる景色を楽しむ姿勢に改めて気付いたプロジェクトとなり、AIGの構造デザインの第一歩となる建物です(田邉 俊貴)