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AIG

Projects

HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.

志免の家

空間性とマッチした長手架構の壁式鉄筋コンクリート造
  • RC RC

over view & Goal

今回のプロジェクトは、福岡の松山さんの友人、建築家の森裕さんと計画した、外を壁に囲まれていて、中央部にボイドを有し、内部に開く形状の平屋の個人邸宅です。構造はWRC造(壁式鉄筋コンクリート構造)で、平屋の200㎡以下であるため4号建築となり、確認申請が不要の建物です。確認申請が不要ではありますが、エンジニアとして正しく計画を行う必要があり、それを踏まえて今回の建物について書き始めようと思い、図面を開き伏図を確認すると“違和感”を覚えました。構造図は仕様書を除くと5枚のみのシンプルな構造図で、5枚のうちの最終ページはリビング中央に配されている約8mのRC造のキッチンカウンターの図面でした。

シンプルにまとめられたこの建物の構造計画/設計のテーマは、設計を担当していない自分(曽根)的に①違和感の正体、②合理性のあり方、③什器と構造の中間のカウンターキッチン、④森さんの変態的センスあたりだと考えました。

Idea

計画初期段階の意匠図を基に、建築家、クライアントはなぜこの空間を実行しようとしているのか?デザイン、機能、コストなど構造的にどのような提案ができるか?その問題定義が構造設計をやっていて楽しい部分であり、これを一言でいうと構造計画と言います。私は、このような構造計画ができるようになりたいと思いAIGで刺激的な毎日を過ごしています。そこで今回の建物について、どのように構造計画を行ったのか?安藤に問うと、「ポイントは1つだけ」と言いました。

①そのポイントとなる内容は、「長手に架構をかけたこと」というなんとも単純なものでした。ここで、私の感じた“違和感”はこのシンプルで、なるほどと思えるアイデアだったことがわかりました。一般的には、壁長さ厚さを決めて、短手方向に小梁を配置し、壁厚さと梁せいを検討し、それが意匠的に収まるのか?収まらないのか?を考えることが多く、それを建築家は求めて構造設計者に依頼をしていることが(私の経験上)多い印象です。その“違和感”の正体となる長手の12mのスパンに対して梁を掛ける合理的とは言えないような計画ですが、建築として必要な空間をゆるやかに仕切る段差、パラペットを梁断面として使うことで梁せいを1m確保でき、梁幅は壁と同厚の150mmまで絞ることを意図しています。また、長手に剛な梁を掛けることで、短手に小梁が不要となりスラブの厚さも150mmで抑えられる効果を生んでいます。建物の形状、建築家の意図、空間のあり方などから最適な解決方法を選択することが重要であり、今回の建物では、その選択の方法にセンスが輝いているように感じます。

②構造計画とは「システムを明確にするための基本的な方針を定める」ことだと言われています。今回の建物における構造計画を考えると、十分に壁が配置されていて壁量について問題はないため、あとは常時の荷重をどう地面に流すかが重要であり、一般的に考えると「長手に架構をかけたこと」が合理的な計画なのかというと、必ずしもそうではないと思います。しかし、それらがもたらす効果は、構造的に明快で小梁が無く余分な型枠がいらないこと、構造空間として見た時に壁とスラブのみとシンプルに仕上げられているなど、建物としての「質」を価値基準とした場合、建築家が考える内部空間の特性と、構造原理の論理性が絶妙にマッチした建物になっていると感じています。これは一つの合理性のあり方ではないかと思っています。

③私の経験上、カウンターキッチンを構造として設計したことがないため、初見ではスキップフロアでもあるのか?と思いました。スラブにしては薄すぎるし、厚さに対してスパンが飛んでいる。そこで伏図を見返してみると、カウンターキッチンであることがわかりました。安藤から話を聞いてみると、建物本体よりこのカウンターの計画と施工方法についてのStudyに最も時間を費やしたと言っていました。しかも出来上がったカウンターの上でジャンプしても全然問題なかったと言っています。自分が担当する建物でも什器を設計するチャンスが回ってきたら大いに参考にしようと思っています。

④この建物の文章を書くにあたって、安藤に話を聞いていて、安藤は森さんとの設計は毎回すごく楽しいと言っていました。そして、いつも森さんの変態的なセンスに引っ張られていて構造計画をするときの選択肢に通常では挙がらないような、こうやったら面白くないですか?という第3局が出てくると言っていました。自分から見ると安藤は十二分に変態なのですが、その安藤が言う変態的センスを持っている森さんとはいったいどんな人なのか、仕事をご一緒したいと思っています。

 

写真と設計図を改めて見ると、構造計画の奥深さを感じます。建物の大小に関係なく本質的なテーマや空間にコミットして、解決方法を構築するあり方は、一般的な構造計画で言う工学的、施工的に正しく合理性を持つ方法論を構築するという側面から大きく飛躍して、建築家とのモノづくりを楽しむ姿勢がまずあって、そのために多少の不合理も空間的に効果が高いなら、選択肢に入れてもOKという思いを感じます。私もそんなエンジニアになれるように精進したいと思っています(曽根卓也)

data

所在地
福岡県志免町
用途
住宅
プロジェクト期間(開始)
2016.01
プロジェクト期間(竣工)
2017.08
規模
地上1階

Credit

クライアント
個人
建築設計
株式会社森裕建築設計事務所
立役者(外部)
建築家 森裕さん
立役者(AIG)
安藤 耕作
写真家
Kouji Okamoto (Techni Staff)