UTRhouse
- Year
- 2021
- Place
- 東京都渋谷区
- Texture
- RC
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
東京都港区元麻布に建つ、重厚な印象の壁が特徴的な住宅です。
特徴的な空間を構築する建築設計事務所バケラッタを主宰する建築家の森山さんと協働した住宅です。
重厚な外観とは対照的に、内部の空間的な広がりが特徴的で、中庭を中心とした回遊型の空間構成となっており、すべての部屋に中庭に向かってスラブtoスラブの大開口が計画され、エントランスの大きな吹き抜けからはガラスの天井を通して空が見える開放的で贅沢な内部空間を持つ住宅です。
計画地の奥には、この元麻布のヒルトップのパワースポットの池があり、その池に向かって傾斜が付いています。その斜面を活かして、池に向かって片持ちのバスルームを配しています。
この建物の構造計画/設計のテーマは、
①外部を閉鎖して内部を解放するRCとSteelポストを生かしたハイブリッドな構造
②2層片持ち部分を実現する構造計画
③特徴的な鉄骨階段
などとしました。
①16mx23mの建物の外壁を主たる対震要素とし、厚さ220mmの外壁だけで水平力に対抗できるように計画しました。
外殻に配した対震壁に対して、内部空間は中庭に向かって抜けるような開放感を実現するため、開口部分に2mピッチで方立てを兼ねた50mmx100mmのスラブ支持用の鉄骨ポストを配して構造要素の存在感を消すようにしています。
構造フレームは、壁に柱梁を内蔵した凹凸のないフラットな構造で、石貼りの重厚な外装や内部の仕上げに影響が出ないような計画としました。
フラットな構造を意識して、小さいスパンで構成し、フラットなスラブ、壁と鉄骨ポストというミリマルな構成となっています。
②計画地は、先述のパワースポットの池に向かって旗竿状になっており、その先に池があります。この通路のような部分は池に向かって傾斜が付いており、池を臨むバスルームを2層分の壁で片持ちとなるダブルデッカー梁としました。
建物本体から飛び出すように幅2.6mx長さ11mの片持ち部分が出ているので、片持ちの反力を本体の重量で対抗できる計画とし、ダブルデッカー梁は、11mの片持ちに対して2層分6.3mの梁せいで対抗するため、無理のない構造計画となっています。
③この住宅の内部には、3つの鉄骨階段があり、どれも空間を演出する要素のひとつとして位置付けられています。
鉄骨階段は、段板の断面が強調されたすっきりとした印象にすることができる力桁という方式を用いて計画しました。これは、下階から上階まで段板の中央部分に桁を通して支持する構造で、段板が中心から片持ちになることで力桁に捩れが生じるため、水平のエッジと鉛直のエッジの両方を実現できる鳥居型のビルトボックス断面としました。
今回の建築で、外部と内部、RCとSteelなど、目的にあわせて必要な材料、構造計画を使い分けることで、空間的にメリハリのある建築を作ることが出来ました。また、鉄骨階段の繊細なディテールに想いを込めることで、小さな要素の積み重ねが全体の空間に大きな影響を与えることに、当たり前ですが改めて気がつくプロジェクトになりました(村松 美幸)