LEGALIE道頓堀東
- Year
- 2022
- Place
- 大阪府大阪市
- Texture
- PC
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
岩手にある盛岡誠桜高等学校は元々私立の女子校で、歴史のある学校が、女子校から男女共学校に変わるタイミングで校舎を拡大するプロジェクトでした。設計におけるテーマとして、補助金を使うために「武道場の新築」をテーマとした方針で計画しました。主要な用途としては、武道場という名の体育館になるため、1階〜2階を体育館とし、3階〜5階を教室としました。つまり、22mx25.8mの体育館の上に3層分の校舎が載るというあり得ない構成となっています。このありえない与条件に対して、体育館の短手22m方向に特徴的なカテナリービームと称した下に凸な梁を計画し、3層分の校舎を支持しています。
この建物の構造計画/設計のテーマは、
①3層分の校舎を支持する体育館空間のカテナリービーム
②体育館を支持する10mの柱のあり方
③PCを用いたシンプルな教室の構成
RCは発生する応力に対処する構造ですが、PCは緊張力による圧縮効果と、懸垂力の組み合わせを使うことによって、RCにはない荷重による応力には好きにはさせない感じが面白いと思います。
構造計画/設計のテーマに即して、AIGのアイデアを挙げると、
①教室層も体育館と同スパンで構築するのは、階高的に不可能なので、中廊下と教室の境界部にSteelPostを配置する構造計画を採用したため、スパン中央部に3層分の軸力が落ちてくるため、AIGが愛用するPSを利用することは最初から決定していました。ただそのPSを用いた梁をどのように構築するかについて多くの時間を費しましたが、最終的にはシンプルビーム状の下に凸なカテナリービームという名称の梁に行きつきました。カテナリービームは、シンプルビームなので上端圧縮、下端引張となるため、圧縮側は教室Slabとして、引張側はPSを配線するためのFlange幅を確保し、上下端を一体の断面として機能させるために必要最小限のWebを配する最も効率的なH型の形状となっています。その上で、下端引張部はPC鋼より線が配線できればよいので、納まりが厳しい端部では配線間隔を大きくして、中央部では集合させて残りの部分の下端Flangeを有機的に開口を設けて軽量化を図り、特徴的なカテナリービームを空間の主題となるように位置付けました。
②カテナリービームを支持する柱の在り方については、当初上層階をそのまま落とすことも考えましたが、それだと体育館の空間のバランスが悪いことが、模型の検証でわかっていました。そのため、上層柱の半分のカテナリービームを軸力で支持できるような、枝分かれ状の架構としてY字型の柱が浮かびあがってきました。ただ、断面がフラットなY字柱だといかにもY型にしましたみたいになることが予想されたため、P.Lネルビィーが得意とした軸力の力学性状に合わせた変断面状のY字柱としました。変断面を採用したためPSの導入は2次応力が大きくなるため不採用とし、RCの柱として計画しました。
③教室部分は前述した通り、教室と中廊下の境界部分に十字型のSteel柱を配しているため、10m程度の連続梁とすればよいため、アンボンドPC鋼より線を配したJoist状スラブとしてJoist@を1050程度として軽量化を図っています。
以上のような構造的なIdeaをカタチにした建物ですが、完成した校舎を見て、学校側から「Y字型柱を万歳柱と呼んでいて非常に縁起が良い」との声を頂き、これは全く予想していなかったのですが、意図にないところで建物の”あだ名”がつけられていることは設計者としては非常に嬉しい出来事だと思っています(曽根 卓也)