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第1回コラム 数字と構造設計のおもしろい関係 

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 第1回のコラムは、「数字と構造設計のおもしろい関係」と題して、数字に関わるおもしろい関係を話してみたいと思います。

 まず、僕が思うに数字というのは、多くの人に賛同を得て、世の中にないものを作る場合に、どうしても介さないといけないモノだと思います。いいものをいいと言うために必要なモノだと思っています。

 具体的に言うと、構造設計の場合、これから作るものの重量があって、それらに対して、一定量の地震力が発生して、それらが成立しているかどうかを梁や柱、壁などの部材の断面で計算して、OKかNGかを設計者として数字で判断して建物を評価します。それらが最終的にお金という要素に置き換えられて、建物の建設のフェーズに移動します。不動産開発の場合は、(僕の知識では)土地の値段と建設の値段、修繕にかかる値段などの合計と建設後に生み出すお金や売却によって生み出すお金などから収支を計算して、OKかNGかを数字で企画者として判断すると思います。これらのフェーズは、設計や計画というフェーズで、次のフェーズとして自分たちが計画したものが、社会的にどういう位置付け(評価)にあるかを違う立場の人と共に動かして行くために、数字で説明すると思います。ここで数字を介して会話をしていると思います。不動産開発の場合は、銀行での融資付けや資金の調達のために、まず利回りがどんなもんかみたいな話をしながら、いいね。とかあまりよくないね。みたいな話をしながら時には再考して実行まで行くのだと思います。構造設計の場合は、設計の結果を全て数値に置き換えるので、法律の想定範囲なら建築の許認可(確認申請)を得たり、実現するために予算内に納まっているかなどをゼネコンを交えてお金に置換して評価します。

 今まで挙げた話は、すごくざっくりしていますが、概ね皆さんの賛同を得られると思いますが、これら全て数字で動いています。では数字だけでいいものが作れるかというと、これは不可能だと思います。それが数字のおもしろいところだと思います。では、なぜ同じルールに基づいているのに、毎回おもしろいことを連発する人とそうでない人がいるのか。一見、不思議に感じるようなことを「いつものこと」のように実行する人とそれを見て、批評するだけの人がいるのか。

 僕が思うに、ここが数字を超えた想いとか信念が形になっているからだと思います。例えば不動産開発者の人たちと打ち合わせをしていておもしろいなと思うのが、ここをこうやったら収支改善するんじゃないの?とか言う時があります。つまり数字を構築するために、勘所があって、最終的な数値はあくまで結果でしかなくて、数字を組み立てるプロセスにノウハウや想い、信念が表れるということだと僕は思っています。構造設計も全く同じで、結果はOKしかあり得ないので、そのOKという数値に対して、アプローチ(設計方法)はほぼ無限にあって、それらのなかで自分たちの信念や勝ちパターンというか最短ルートをバリエーション豊富に持っている人がおもしろいものを作れる人なんだと思います。

 では本当に世の中に前例のないものを作る場合、何を指標にしているか。僕が思うに本当に新しいことってそうそうはないと思っていて、結局今まで世の中にあったものの少し組み合わせ方を変えてみたり、考え方を180度とは言わずとも135度くらい変えて巻き起こることを楽しんでみることが新しいことをやる。という価値だと思っています。なので、世の中で同業者などが行なっている前例を分析して、なぜこの人はこう考えてこの表現となったんだろう。とか、僕だったらこうするな。みたいなことを常に好奇心を持って考えて、ストックをたくさん持っておかないと、いざ新しいことに挑戦するチャンスが回って来た時に、何しようかなー。とか言って雑誌をめくったりしているようでは、真に新しいものは作れないと思っています。色んな設計者と協働するのが僕の仕事ですが、打ち合わせでこんな建物作りたいんですよー。とか言って建築雑誌を見せられるとこの人のやりたいことはこんなもんなんだなー。って思ってしまいます。あくまでエッセンスとして参考にするのはいいですが、雑誌に載っているものはアイデアとしては2年くらい前のものである場合が多いため、その時点で当人としては未知で新しいかもしれませんが、世の中的には既知であり全く新しくないと僕は思っています。

 なので、本当に世の中に前例のないものを作るということは、その人の持っている知的好奇心や想い、世の中への問題定義などが体現されたものであると思います。ですが、これだけでも意味が無くて、やっぱり最後に実行するためには、数値に置き換えられる能力がないと人は動かせません。数字はあくまで自分たちの想いを形にするための手段なのだと思います。

そのため、僕は数字に弱くて。なんて言っていると本当に新しいものは作れない。と僕は思っています。

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