LEGALIE道頓堀東
- Year
- 2022
- Place
- 大阪府大阪市
- Texture
- PC
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
盛岡市郊外の幹線道路から少し脇へ入った場所にある、開けた土地に建つクリニックの新築プロジェクトです。 在宅医療を中心にスタートしたクリニックが包括ケアを行うため外来・デイケア・入院施設を備えるべく今回の建物が計画されました。建築家の佐藤勝美さんが構想したのは、中央に水盤を設け、それを取り囲むように1階のデイケア室・託児室・外来ロビー、2階の食堂・入院部門共用部を配置した、平面形が40x30mのスクエアな2階建てのプランでした。そこからAIGが発想したことは、「建築的にも構造的にも施工的にも合理的な適材適所のハイブリッド構造を考案する」という一言に集約されます。 ところでこのプロジェクト、5年前のプロジェクトの同窓会のような雰囲気でした。というのも、2012年の奥州市のプロジェクトで居合わせた意匠担当の三浦さん(PIA)、現場監督の高野さん(はりま建設)、構造担当の藤田(AIG)という、まったく同じ布陣でチームワークもばっちりでした。
①建築的に合理的なハイブリッド 今回の建物は、1階に外来部門・デイケア部門・往診部門、2階に入院部門が配置されており、所々に大きな部屋を挟みながら、小部屋が並ぶ計画です。上下階で動線位置がそろっておらず、建物内部に対震要素を設けることも不可能ではありませんが、上下階で鉛直部材をそろえる必要があるため、プランへの制約が大きくなります。そこで、対震要素を外周部に集約し、水平力から解放された内部空間は、床荷重を支持するのに十分な梁とポストを配置することとしました。寒冷地で外断熱が想定されていたため、外壁はRC系材料、内部ポストは間仕切り用のLGSスタッドと同程度のサイズとすれば、界壁内に忍ばせられることから、鉄骨の角鋼で極小断面(100×100)としました。 ②施工的に合理的なハイブリッド 「混構造は工種が増えるのでコストが高い」というイメージがありますが、果たして本当にそうなのか、それを払拭するようなハイブリッド構造があり得るのではないかというところから考え始めました。まず、工期(現場工期)を短縮すればコストダウンにつながります。基礎は基本的に現場打ちが優れていますが、上部構造はプレファブ化することで、現場工期を短縮できます。①で想定した外周RC系材料はプレキャストプレストレストコンクリート(PCa+PC)工法が適しているといえます。今回の建物は接道条件も敷地内ストックヤードの確保も問題なしでした。内部の鉄骨部材についても工場生産品を組み立てるため、現場工期は短くて済みます。上下階の遮音性の観点から、2階床についてはコンクリートスラブとする必要がありました。床スラブについては、平面が大きいので、運搬効率の観点から、プレキャストよりも現場打ちの方が経済的と判断して現場打ちを採用しました。現場打ちのRC工事は細かく見ると型枠・鉄筋・生コンという3つの工種に分類されます。鉄筋と生コンの工種をなくすことはできませんが、型枠は内部の鉄骨梁と相性のよいデッキスラブを採用することで現場型枠を省くことができます。 ③構造的に合理的なハイブリッド 対震要素としてSteelとRC系材料のどちらが優れているかを一概に比較することはできませんが、同じ平面サイズであればRC系材料の方が剛性が高く、ほかの機能(防水性・耐火性)も兼ね備えていることから外壁としてコストパフォーマンスが高いと言えます。長期が支配的な小梁は、同程度の断面サイズで比較すれば断然Steelの方が優れていると言えます。屋根は乾式デッキにスタイロフォームを載せる程度で十分機能を満足できるので、コンクリートスラブを省略し、水平力の低減を図りました。屋根面水平力の外周耐力壁へ、せん断力が移行できるように壁際部分に水平ブレースを設けています。 ④実施したハイブリッド構造について 外壁をPCa+PC工法の耐力壁とする考え方で設計を進めていたのですが、PCa壁版の型枠サイズと開口位置の整理が難しいことや、この規模だと型枠転用によるPCaのメリットが低いことなどからプレキャストを断念し、外周壁については現場打ちPRCで実施しました。それでも圧倒的に支保工が少ない施工風景を見ると、このハイブリッド構造の可能性と発展性は十分にあるなと感じられました(藤田 啓)