狛江メディカルビルディング
- Year
- 2022
- Place
- 東京都狛江市
- Texture
- STEEL
HERE WE INTRODUCE THE PROJECTS WE HAVE DONE.
ALL PROJECTS ARE MADE OF IDEAS AND THOUGHTS THAT
EMBODY OUR PHILOSOPHY “IMAGINEERING”.
原宿キャットストリートに交わる、意識しないと通り過ぎてしまうような生活道に面した場所に計画した3F建てのテナントビルです。前面道路の2項道路はセットバックも未了で現況の道路中央には電柱があり、有効が1.2mほどしかない「ありえない」建設条件です。キャットストリート側は階段となり、反対側もクネクネのカギ型の道路としか接していないため、計画の最初期から運搬、建方がテーマのメインでした。余条件が厳しいということは、苦しいことも多いですが、新しい解釈や方法論を構築できる可能性に満ちているという側面もあり、当初からこの特徴をどう建物に反映させるかを主眼に置いていました。クライアントは人形町で老舗の販売業をやられている方で、その他にも白金でイタリアンレストランをやられていたり、おおらかで芯の通った方で、最初のプレゼンで佐藤さん、安藤さんが楽しくやられているようなので、そのコンセプトでいきましょうと賛同を項きました。その時に立てたコンセプトは①構造自体が建物の特徴となるような愛嬌のあるフレーム、②狭いことを克服するために人力+アルファで最終運搬、建方ができる効率のよい小径フレーム、③難工事が予想されるため、関わった人が全員で汗をかけるような建物とすることを建築家の佐藤友則と話していました。振り返ってみてもやはり1番汗をかいてくれたのは(有)鉄骨屋の仲田さんです。彼とは、今現在いくつかのプロジェクトを協働していて、AIGの構造計画/設計を実現するためには居なくてはならない存在ですが、このプロジェクトが協働の第一歩でした。仲田さんとの率直な意見の交換は本当に面白く、どっちが施工者でどっちが設計者かわからなくなるくらい毎回白熱してしまいます。 仲田さんからの提案は「Y字フレームは全て現場溶接で、落とし込みで作れるようにしたい」「すぐ近くの2t車が入れる場所から、手押し車2台で搬入できる部材割りにしたい」などどれもワクワクするような提案で、1stミーティングの時に、この人はプロだなぁと感じました。
Over view&Goalでも言っている通り、この建設条件を克服するために大切なものは、まず人であるということです。その上でAIGの構造計画/設計のアイデアは ①一般的なSteel造はポスト&ビームの門型フレームとなるところ、Y字フレームの柱と梁を現場で剛接合して、方杖相互を接合して愛嬌のある5角形を形成し、ラーメンとトラスを一体化したY字型フレームとする。 ②人力運搬/建方のため軽量化、小寸法化を図る必要がありますが、Y字型フレームをスムーズに作るためにはジョイントが目立たない方がよいため、部材のジョイント割りは、最も応力の大きいYの分岐点とする。 ③Y字型フレームのエッジを際立たせるために柱部は角型鋼管ではなくL型アングルで□柱とする。 ④杭については、初層が盛土なので杭基礎を採用せざるを得ず、杭を打つための杭打ち機はJRのホームドアの施工のために開発された、運搬時機械幅750mmの日本で最小の杭打ち機で施工する。 ⑤AIGでは階段を1つのデザインのテーマとして積極的に案出しますが、今回の階段は折版状のPLの曲げ段板の四角螺旋階段です。L型アングル4丁合わせで45°放射方向のリブとササラのみのシンプルな構成をすべてHTBジョイントとしています。その機械的なデザインは設計者の想いと厳しい与条件の結晶のような階段となりました。 以上のようなアイデアをカタチにする上で重要になるのはやはりヒトです。「あり得ない」与条件だからこそ、その重要度は増すばかりだと感じます。建物は目立たないですが、改めてこの建物のビハインドストーリーを知ると1つ1つのテーマにしっかりと向き合って、答えが準備されてあり、建物の大小に関係なくモノヅクリは楽しいと感じます(曽根 卓也)